梗 概
Money Laundering Business

サラリーマン諸君。君達は子供の頃、動かなくなった時計の歯車を独楽(こま)にして遊んだことはないか?壊れた時計の歯車は見事に独楽に変身して、のびのびとよく回ったものである。サラリーマンは社会や企業の歯車には違いない。今の世の中、社会や企業と噛み合わせが悪く、欠陥歯車として打ち捨てられる歯車がなんと多いことか! しかし実際には、社会や企業の側に欠陥がある場合のほうが多いぐらいである。
サラリーマン諸君。噛みあわないからと言って簡単に妥協するな。自らの角を削って丸くなり、曖昧な時を刻むような歯車にだけはなるな。そしてどうしても噛みあわないなら、取り外されてうち捨てられる前に、自ら飛び出して、命の限り独楽として回ってやろうじゃないか。

大手損保、中央火災の中堅課長、滝田浩介は、トップの命令で、米国子会社、テキサス・カジュアルティ・インシュアランス(TCI)の赤字究明のために単身テキサスに派遣される。
そこで浩介は、TCIの赤字の裏には、TCIの大口客先で、地元有力企業のデリル&サンズ(D&S)が、闇の世界で得た金を、派遣社員につけた高額の労災保険を悪用して、タックスヘイブンであるバーミューダに送金するシステムがあり、子会社TCIの社長、ギルバート・ウォリス(ギル)がそれに一枚噛んでいるのではないかという疑いを抱く。しかも、そのシステムの邪魔になった派遣社員が二人まで、合わない歯車が打ち捨てられるように抹殺されているらしいことを知る。
そんな浩介に、システムの存在を裏付ける証拠書類の入手を請け合ったのは、密かにギルの後釜を狙うTCI副社長のディックだった。しかし、そのディックも自宅に入った強盗に射殺され、家からは彼が入手したはずの証拠書類が消えていた。
警察は、事件の裏にTCI内部の不祥事があり、浩介がその鍵を握っていると推察し情報提供を求める。しかし不祥事が世間の目に触れることを怖れる中央火災トップは、浩介の警察への協力を許さない。それどころか、ギルの失脚が自分の失脚に繋がることを怖れる海外担当専務の池元は、浩介が送ってきた調査報告をすべてギルに逆流させてしまう。TCI内部では、浩介に協力してギルに都合の悪い情報を流した犯人捜しが始まった。しかし警察への協力を禁じられ、自らの調査を続けるための手掛かりも失った浩介は途方に暮れるばかりだった。
そんな時に、危険を冒して浩介に事件解明の新たな糸口を与えたのは、TCIの取り外し寸前の歯車、定年間際のうだつの上がらない支店次長カメロンだった。
浩介は勇気百倍、自らも外れた歯車になる覚悟を決めてバーミューダに飛ぶ。しかし、そこにはディックを殺した男が先回りして待ち受けていた。

 

第三作「マネーロンダリング・ビジネス」

Takashi Shima